鳥瞰図をわざわざ私に頼む意味を考えてみた
「私に鳥瞰図や俯瞰図を、わざわざ頼んでくる意味ってなんだろう?」
だって、そういう鳥瞰図とかを専門に描くイラストレーターさんもいらっしゃいますし、パースがうまい方もいっぱいいるわけで「なぜ私?」
出てきた答えは、「パースの専門家じゃ出せないタッチの絵が欲しかったから」
私の売りはというと“楽しさ明るさハッピーさを前面にうちだしたイラスト!”
ということで、鳥瞰図だし公的施設なのでそこまでタッチは崩せないという条件の下、できるだけ“私の味”を出すことに力を入れました。
視点を決めて、建物や全体は設計図から頭の中で建ちあげてゆく
だいたいの案件は、新しく造るかリニューアルかの企画段階で仕事の依頼がくるので、打ち合わせの際にいただく資料は大ラフやイメージスケッチ、現段階であるものの参考写真、そして設計図です。
ですので、建物1つ1つの設計図を見ながら頭の中で立体的に建ちあげていって、それを敷地の中に配置してゆく作業になります。
まずは全体的な敷地を考えて、どこから見たら全体的にうまく見せられるかの“視点”を探りましょう。
鳥瞰図は英語でbird’s -eye viewと訳されるように、飛んでいる鳥の視点で見た図のことなので、鳥がどの高さから、どの方向から見ているのかが全体の雰囲気を決めるポイントになるのです。
どこをメインにするのか、見せたい所をうまく見せられる角度はどこなのか、鳥になった気持ちで360度ぐるりと上から眺めて、それから高さを変えながら飛んでみて視点を探ります。
視点が決まったら、敷地全体のパースをざっくり決めましょう。
その敷地に道や広場、森など決まっているものを描き入れていって、建物の敷地を決めてゆきます。その際に設計図に書かれている寸法で、建物の大きさを決めていって敷地を割り出してゆく感じです。
そして、その敷地の上に一棟一棟、建ち上げてゆくというイメージで作業を進めてゆくわけですね。最後に、人や小物、演出する要素を描き入れていきましょう。
私の場合、柔らかさを出すために定規の線は使いません。全て、フリーハンドで描きました。
線画が決定したら、カラーリングで楽しさを演出!
線画でクライアントからOKが出たら、次はカラーリングになります。
ここで、大切なのが余白の残し方!
いかに光を感じさせるかが、楽しさや明るさを出すポイントなのです。
太陽がどこの位置にあって、どのくらいの高さにあるかによって、光を入れる場所・角度・広さが変わってくるわけです。そして、それを強調するのが影!“影が濃くて少ない面積ならば、高い確度から強い光が射していること”になるし、“影が薄く長く伸びていれば、低い確度から影が伸びている反対の方向から太陽が射していること”になるわけです。
色の濃淡やムラ・余白を使って“光と影”や“動き”を出すことは、全体の雰囲気を決めるのに重要なポイントになるので、最初からイメージしておきましょうね。
そして、最初から濃い色をベタッと塗らないで、少しずつ透明感のある色を重ねていって、全体の様子を見ながら作業してゆくことが、失敗しないコツです。
この当時のお仕事はアナログだったので、紙にペン入れして、そこにマーカーや水彩でカラーリングしてゆく方法でした。(今は出来ないかも・・・)現在はPhotoshopを使って制作するので、不透明度を2~30%でカラーリングしたレイヤーを重ねることで調整していきます。
“建築物が好き”“興味がある”ということも、大切かもね
設計図を見て建造物を頭の中で建ちあげるためには、建物に興味がないと難しいかもしれません。ある程度の建築知識も必要なので、調べるモチベーションがないと無理ですもんね。
今はネットでいかようにでも調べられますが、この当時は本から知識を得るしかなかったので、建築の本・インテリアの本、造園の本をいっぱい買いました。でも、好きな分野だったので、楽しかったんですよね。洋書のインテリアの本を買うときは、ワクワクしました!
施設内の案内図やイメージパース
こちらは、サンシャイン水族館がリニューアルした際に描いた館内イラストです。
ファミリーがターゲットだったので、子ども達に楽しいと感じてもらえるようなイラストになっています。[こちらのイラストは、ヒョウヒョウ・タッチです]
これらは新宿高島屋屋上ルーフガーデン、リニューアル企画のためのイメージパースイラストです。
正確性というよりは、植物の柔らかで穏やかなイメージ、緑に包まれた心地よい雰囲気、を前面に打ち出しています。
自分なりの鳥瞰図を描いてみて
私自身、パースを描くのは得意とは言えません。桑沢時代、立方体のデッサンの授業でなかなかOKが出ずに、へこんだこともあります。
でも、パースが苦手な人が描く鳥瞰図って、よく考えれば“オリジナリティー”になると思うんですよね。ほら、うまくなればなるほど、みんな同じになっていくわけじゃないですか。どんな風にへたかは、その人その人で違うので、それが味につながればいいんじゃないかというわけです。
なので、自分の描く鳥瞰図がどんななのかトライしてみて、出来上がりを客観的に見ると、自分のオリジナリティーが見えてくるかもしれませんよ。
描いてみたいな!と思った人は、トライしてみてね。