それぞれの独特な世界観を、どう表現するか
「占いの世界」ってご存じですか?
アシェットから刊行されて2012年から350号続いたシリーズです。
こちらのお仕事に最初から最後まで関わらせていただきました。知らなかった世界が格段に広がり、とても楽しいお仕事でした。
占いの世界は広いので、いろいろなカテゴリーのお仕事をさせていただきましたが、今回ご紹介するのは「カードいろいろ3種類」
最初に手がけたのは『守護仏カード』でした
守護仏カードは12枚構成です。
「千手観音」「虚空蔵菩薩」「普賢菩薩」「文殊菩薩」「勢至菩薩」「大日如来」「阿弥陀如来」「不動明王」を描くのですが、いただいたサンプルの元絵がちょっとこわい・・・・。
仏像の絵をリアルに描くと、「雰囲気重い」「暗い」「古くさい」感じが否めないわけなのです。
「占いの世界」のユーザーは99.999%がきっと女性だと思うので、どうやってライトでおしゃれできれいめの絵柄にできるか、仏画いろいろを調べて考えました。
で、よく仏像の後ろにある同心円状のもの、「光背(こうはい)」というらしいのですが、このモチーフを利用すれば色味で遊べるしちょっとポップなイメージがつくれるのではないかと思ったわけです。
「光背(こうはい)」は神仏の体から発せられる光明を視覚的に表現したものだそうで、神秘的な世界観を出すためにもコンセプトにもピッタリだと思ったわけですね。
守護仏自体は余白を活かしてサラッと見せて、背景色と光背のデザイン&色でいかにおしゃれに見せられるか、これを目指しました。
2番目は『エテイヤカードETTILLA』でした
エテイヤカードは、普通のタロットカードより歴史があるカードです。
謎の多いカードらしいのですが、18世紀の世界初の占い師エテイヤが考案したカードといわれています。
Allietteを逆読みして、ETTEILLAと呼ぶようになったとか。
私も全然知らなかったのですが、日本ではエテイヤカードを使って鑑定できる占い師さんは珍しいみたいですね。
クライアントの希望は、「クラシックなイメージだけど明るくサラッと綺麗な感じに」というものでした。
エテイヤカードの古い印刷技術の感じを出すために、線は途切れ途切れ感を色はライトな感じを出すために、浅く明るく、でも渋く、でも華やかに・・・。
インクの乗りのまだら感、黒インクの汚れなどを工夫して表現しました。
3番目は『オラクルベリーヌ』
フランスで、古典的オラクルカードとして大変有名なカードです。
パリで大変有名だった占星術師・カード占い師エドモン・ビロードが1845年頃考案しデザインしたオラクルカードです。
その後パリの著名な占い師、ベリーヌが1950年代に再発見し、1961年にフランスのカードメーカー・グリモウ社により復刻発売されました。
こちらも絵柄が決まっているため、エドモンさんの味を残しつつちょっと違う感じを、線やブラシ・色の付け方で出しました。
しいていえば、よりポップでアートっぽくキッチュなイメージにしたつもりです。
元絵があって描くべきモチーフがほとんど決まっていると、元絵の差別化をどう出すかが鍵になってきますよね。
差を出すためにクラシックなカードをあまりにもポップにしすぎると、手にした人が???「イメージじゃない・・・何これ?」というのもまずいですし、まるきり同じで「元絵とどこが違うの?」というのも、まずい。
そこらへんのさじ加減というか、微妙なニュアンスが決め手なのでしょうね。
「占いの世界」では、カードは何枚かづつ付いてきて集めてゆく付録のスタイルだったので、途中で集めたくなくなっちゃったら、一番困るわけでして。
なので、一番大切にしたのは『本物っぽさ』。だってチープなものをコツコツ集めたくないじゃないですか?
いかに本の付録を、安っぽくなく本物に見せられるかを目標にしたのでした。