タロットカード3種類、それぞれの世界観と時代感
「占いの世界」ってご存じですか?
アシェットから刊行されて2012年から350号続いたシリーズです。 http://www.uranainosekai.jp
こちらのお仕事に最初から最後まで関わらせていただきました。知らなかった世界が格段に広がり、とても楽しいお仕事でした。占いの世界は広いので、いろいろなカテゴリーのお仕事をさせていただきましたが、今回ご紹介するのはタロットカードです。
22枚の大アルカナと、56枚の小アルカナ、合計78枚のカードからなるタロットカード。
78枚に定まったのは18世紀のことらしいです。
タロットカードはどこで生まれたのか?14世紀以前、記録の残っていない頃のことはほとんど謎とのこと。起源も、インド、ユダヤ、北アフリカなどといわれていますが、有力なのはエジプトのようです。
エジプト語で”taro”は”tar”(法律)と”ro”(王)。つまり、王の法、または、皇帝の道という意味らしい。タロットカードの絵柄は古代エジプトの宗教、哲学、法律、皇帝などあらゆる文明が背景となったマンガで出来上がっているのではないかと考えられているみたいです。
私もこのお仕事をいただくまで、タロットカードにそんな種類があるとは思いもよりませんでした。
最初に手がけたのは「エジプト・タロットカード」でした
カルトゥーシュカードと占星術・スターライトフォーチュンの黒田聖光さん監修のもと始まったエジプトタロットですが、イメージが決定するまでは「ああじゃない、こうじゃない」試行錯誤の連続でした。
監修する側の持っているイメージと描く側のイメージのすりあわせ作業はいつでも大変ですが、今回は監修する側は長くタロットカードに関わって思い入れも強い分、タロットカードに疎い私とは温度差が半端ないわけです。何十回かにわたるメールのやりとりや、電話での話し合いを経てやっとイメージが決定したときは「やったー、決まった!!!」バンザイしました~。
始まってみると、産みの苦しみが大変だった分進行はとってもスムーズ!!イメージが確定しているので、完成が予測できて描いていて楽しいし、ストレスフリー。
こちらが、最初の頃のイメージサンプル。紙はネットからダウンロードしたパピルスです。今見ると硬くて味が無いですね~。
最終的には紙は、黒田さんがお持ちだったエジプトパピルスを送ってもらって、それを経年劣化したように周りをちぎって(何十パターン作った)それを撮影し、これぞと思う5パターンをチョイス。
それをフォトショップに落とし込み、より経年劣化したように見せるため染みや斑点を一枚一枚違った位置に入れるという凝りよう!
ブラシの種類も、実線にならず味と強さのニュアンスのあるものをチョイスしました。
レイヤーはベースにパピルスレイヤー、その上にしみ、色レイヤー2枚以上、線のレイヤー2~3枚、線の上にのせるしみレイヤーと、なんだかんだでレイヤーは10枚くらいになってましたね。
ここまでこだわって完成しただけあって、完成品は大好評!!
私にとっても記憶に残るお仕事になったのでした。
2番目に依頼されたのが「マルセイユ版タロットカード」
16~18世紀のヨーロッパで大量生産されていたカードのリメイク版です。
木版画らしいラフな線が特徴なので、そのイメージを壊さないように差別化を図るのが難しかったです。元のカードよりは、“きれいめなヴィンテージ感”と“フランスの港町っぽいこじゃれた感”を強調したつもりです。
色数が決まっているので、単調にならないように“線の抑揚”と“色の濃淡&かすれ具合”でディテールを強調!安っぽくならないように工夫しました。
3番目は突然依頼された「インド版タロットカード」
最初は他のイラストレーターの方に依頼が行ったようなのですが、どうしてもイメージが合わないと言うことで私に依頼がきたといういきさつがあるようです。
クライアントの希望イメージは、『インドの神様の絵みたいにギラギラと独特のムードを放つ存在感のあるイラスト』って感じでした。
インドの神様達は、肌のグラデーションや装飾品の細かさがめんどくさ~い。でも、手を抜くとそれっぽくなってくれない・・・。
そしてギラギラを強調するために色を派手にしすぎると、安っぽくなっちゃってチープ感半端ないのです。む・・・むずかしい・・・
前のイラストレーターさん、逃げちゃった気持ちわかるわ~。などと、文句を言いながら、完成したのがこちら!
★一番のお気に入りのガネーシャをご紹介します!
【ガネーシャ】
ヒンドゥー教の神様。インドでは現世利益をもたらす神として人気があります。除災厄除・財運向上でも信仰されています。また『智慧・学問の神』でもあり、特に『富の神様』としてインドでは人気が高いそうです。
肌色だけでも、何色も使って独特のてかりを出しています。顔と太鼓腹の立体感がガネーシャのキモなので、肌の陰影には気を遣いました。
アクセサリーや帽子、椅子などの小物の装飾が、富を表すと思うので、手抜きするとダメ。豪華さときらびやかさが売りなので、いかに品良くピカピカさせるかがセンスのみせどころです。
苦労しただけあって、ガネーシャったら良くないですか?(自画自賛)頑張った分だけ満足感をくれる、インドの神様達なのでした。他の神様達もちょっとご紹介しますね。