寓話的なイラストのコツ“ディテール” [千葉銀行ロビーのスクリーン画面]

千葉銀行ロビースクリーン用通常画面
-千葉銀行ロビースクリーン用通常画面-

ロビーに設置するスクリーンに映し出される“綺麗で親しみやすい絵”

DNP(大日本印刷)から依頼された、千葉銀行のロビーに設置される大型スクリーンに映し出される画面用イラストです。

ロビーの目に付くところに設置予定なので、綺麗な絵画風にしたいとの要望でした。

千葉の昔話や言い伝え・特産物などをちりばめてあり、ボタンを押すと説明やお話しがアナウンスされるしくみになっています。

入っているのは、「馬の話」「ぶたの話」「桜の話」「蝶々の話」「ねずみの話」「みつまたの話」の6コのテーマ。

上が通常の画面。それぞれのボタンを押すとその部分が変化するのですが、全部のボタンを押すとどう変化するかが、こちら!

千葉銀行ロビースクリーン用アクション画面
-千葉銀行ロビースクリーン用アクション画面-

どう変化したか、わかりますか?

動きは、ちょっとした動きなので「間違い探し」みたいですけど、蝶々は羽ばたき、桜は満開になります。そして、それぞれの説明や言い伝えの音声が流れるのです。

初回の提案はちょっとモダンアートをイメージしたものです

依頼内容の“綺麗な絵画風”を聞いたとき、私はモダンアートをイメージしました。

銀行のロビーって、ちょっとおしゃれで こじゃれたアートっぽい作品が飾ってある雰囲気ありませんか?

なので、最初の提案はこちらの4点になりました。

高級感を狙ったカラーリング
-高級感を狙ったカラーリング-

テーマをレイアウトした絵柄です。

パステルトーン&ビビッドカラー
-パステルトーン&ビビッドカラー-

綺麗でおしゃれなモダンアート風って感じにしてみましたが、そんな感じします?

でも、この案はクライアントのイメージと違ったようでボツになりました。

次の提案は大人の絵本というか“寓話風”で

もう一度クライアントと具体的に話したところ“親しみはあるけれど高級感のある”という路線で決まりました。

テーマを聞いたところ“言い伝えとか特産品”ですし、アイテムは“馬・ぶた・ねずみ・みつまた”なので、変にモダンにしてもおしゃれにしても違う・・・って感じですよね。

というわけで“親しみはあるけれど高級感のある”ってどんな?と考えたところ“寓話風”に行きつきました。

“寓話”を調べてみると「擬人化した動物などを主人公にして、メタファーを使い教訓や風刺を織り込んだ物語」とあります。古代ギリシャからあるらしく「イソップ物語」とかが有名ですね。

教訓や風刺がテーマになっているところからして、ちょっとシニカルでクラシックなイメージです。“昔のちょっとひねくれたおしゃれな絵本”って感じでしょうか。

では、どうやったら“昔のおしゃれな絵本”風になるでしょうか?

決め手は“ディテール”だと思うんですよね。普通“ディテール”とは「全体に対しての細部のこと」を言いますが、この場合は美術関係の“ディテール”。輪郭や全体の色使いに対して陰影の濃淡にこだわることで、作品を支える要素になる「細かいこだわり」のこと。

とはいえ、まずは形からです。擬人化した動物がメインとなりますから、まずは動物の形をどうするかです。子どもっぽくならないようにデフォルメしましょう。表情はシニカルな感じにすると、ちょっとユーモラスで大人っぽくなりますよ。

全体の形はデザイン化してスペースを考えてシンプルにすると、ディテールが効いてきます。

色ベタとムラの面、線の配分、白の分量も、イメージにかかわってきますので面と線の比率を考えましょう。

全体のデザインが決まったら、デザインしたアイテムひとつひとつにディテールをつけてゆきましょう。クラシックなイメージにするために、「石版印刷・木版印刷・活版印刷」などの昔の印刷物にありそうな、独特な“かすれやムラ”“粗いグラデーション”のディテールをチョイス

ディテールを変えるだけで、作品全体の雰囲気が一気に変わってしまうものなのです。

意図的にディテールをつけてゆくことを覚えると作品の世界が広がってゆくので、作品の構想を練るときにはディテールも頭において考えましょう。

「この作品には、どんなディテールをつけようかな?」と、ワクワクしながら楽しんでアプローチしてくださいね!

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